いろいろな勝負事、ラグビーや他のスポーツでも「流れが変わった」とよく言われます。私も何度か使いましたが、確かに試合をやっている中で、非常にうまく行っていたのに、突然、全てがうまくいかなくなったと言うことがあります。
また全く逆のこともあります。やることなすこと全て裏目に出ていたのに、突然全てうまくいくようになったと感じることがあります。
これをもう少し具体的に考えると、好循環と正の相乗効果が働いている時には「流れに乗っている」と言える状況で、チームに勢いがついて、相手チームはなかなか止めることができません。
ラグビーは15人の選手が入り乱れて、走り回る競技です。正の相乗効果は15人全員に起こるし、また相手方の負の相乗効果も15人全員に起こります。これは当然7人製のラグビーよりははるかに大きなもので、好循環と正の相乗効果が出るようなゲーム戦略が必要だと思われます。
簡単に言えば、フォワードが前に走れる場面をたくさん作るゲーム戦略です。
もう少し具体的に言えば、ディフェンスの時にはできるだけ飛び出して、できるだけ前でタックルし、アタックの時にはできるだけ浅い(相手に近い、前に出る)アタックラインでタックルされても、フォワードができるだけ後ろに走ることのないようにすることです。
そうして、全員が前に走れるような場面をできるだけ多く作れば、「流れに乗っている」と言うような雰囲気を作り上げることができます。
一度このような流れになると、これを止めるのは非常に難しいです。多くの場合、この流れが変わるのは攻める側のチャンスでの凡ミス、守る側の激しいタックルです。
大学4年の時の京大との試合は正にこのタックルで流れを変えました。この日の京大は素晴らしいラグビーをしていました。試合開始から速いリズミカルな試合運びで同志社は振り回されました。流れは完全に京大で好循環と正の相乗効果が完全に噛み合った状態で、総合力では同志社が優ってはいるものの、このままでは負けるのではと思っていました。
前半の終わり、リードされてゴール前に攻め込まれました。下の図の赤が京大の宮崎で青が私で逆サイドの宮崎が私のサイドに走り込んできました。私が宮崎に向かって走れば、宮崎はパスをして、彼がパスミスやパスのタイミングを外すとは思えませんでした。
私が私の対面の選手に向かえば、図のように私の背中を走り、フルバックの選手より宮崎の方が足が速いので図のようなコースを走りトライするのが彼の得意な走りであることはわかっていました。
このコースは私も得意なコースで何度もトライをしています。当然、イメージトレーニングでこのコースを走られた場合の対策も考えていましたが、実践したことはありませんでした。
宮崎の方へ少し向かって走り、すぐ自分のマークの方へ方向転換し、更に自分が元いたコースに戻るように走り、この間、意識して宮崎の方を見ないようにしました。
予想していた通り、姿勢を低くする暇もなく、宮崎と正面衝突して抱き抱えるようにしてタックルしました。この時、宮崎は「ナイスタックル」と叫びました。
宮崎が私のサイドに走り始めた時、多くの京大の選手は宮崎がトライをとることを確信し、勝利が近づいたと思ったと思います。
ところが一番得意な戦法がタックルされ、流れが変わるのではと思ったのでしょう。本当に流れが変わったみたいで、急に同志社が元気を取り戻し、後半になり逆転しました。
この時の話はこちらから
勝負の綾と言うものはこのようなものです。もしこのタックルがなければ、同志社は京大に大敗していたかもしれません。
星名先生の理論は非常に素晴らしいものです、好循環と正の相乗効果を発揮しやすいものです。
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