星名理論と岡理論 91 主体的思考による環境の最適化 8
性格は変えられないが思考は変えられる。
無口で、照れ屋で、口下手で、表現能力に欠けた私は、仲間内の食事会などでもほとんど聞き役で、自分から話すことはほとんどありませんでした。この性格は今でも変わっていません。もう人生も終わりに近いので死ぬまで変わることはないと思います。
主体的思考の人のもっとも象徴的な特徴は、「行動や発言が積極的」だと思います。性格だけ見ると、私はもっとも受動的思考で、とても主体的思考ができる様な性格ではありません。
でも私の周囲を見回すと、体がデカくて、声が大きくて、積極的に行動する輩は多い様に感じます。でもそれらの人が主体的思考を持っているかと言うと、そうでもない様に思います。
教育の専門家ではありませんが、日本の教育制度でほとんどの日本人は受動的思考になる様に教育を受けていたのではと感じます。
そのため、主体的思考になるには、私のようにそれを体験しないとなかなか受動的思考から抜け出せないのではと感じます。
ラグビーと言うスポーツは体がデカくて、声が大きくて、積極的に行動するのは、そこら中にいます。彼らがラグビーのゲームの中で、選手としてチームに貢献できているかどうかは、全く別問題です。でも、ラグビーをして行く中で、「性格は大雑把でいい加減な、良い言葉で言い直すと、寛容で柔軟性があり、他人の価値観と多様性を認める人間」になっていく確率が高くなります。
でもこれらはラグビーのプレーとは関係ありません。私は「他人の価値観と多様性を認める」方が「主体的思考になる」よりは重要だと思いますが、せっかくラグビーをするのであれば、主体的な思考を持つ様になって欲しい、と思っています。
ラグビーをする人は、是非、星名先生の理論を試してみて、主体的思考を体験してみて欲しいと願っています。
またラグビーをしない人も、小柄で声が小さくて消極的な人も、主体的な思考を試してみて、「自分で考え、判断し、行動して、責任を持つ」ことを心がけて、そしてそれを主張し、発信すれば、日本の劣化を止める事ができると思います。
私の好きな岡先生の言葉です。
私の様な性格でも主体的思考になれることをいろいろ書いていきたいと思います。
星名理論と岡理論 92 主体的思考による環境の最適化 9
ラグビーにおける主体的思考とは
ラグビーをして行く中で、「性格は大雑把でいい加減な、良い言葉で言い直すと、寛容で柔軟性があり、他人の価値観と多様性を認める人間」になっていく確率が高くなります。
でもこれらはラグビーのプレーとは関係ありません。私は「他人の価値観と多様性を認める」方が「主体的思考になる」よりは重要だと思いますが、せっかくラグビーをするのであれば、主体的な思考を持つ様になって欲しい、と思っています。
主体的な思考になるのは比較的簡単です。星名先生の理論の極端に浅いアタックラインは主体的な思考になって初めてできるものですが、スタンドオフの選手のパスの能力とインサイドセンターの横に伸びるスピードと、二人のタイミングが取れて初めて実践できるもので、少し時間がかかると思います。
主体的な思考に1日で変わったチームもあります。東京外語大学のラグビーの選手達は夏合宿で1日で主体的思考に変わりました。
ほとんどの選手が大学に入ってからラグビーを始めて、体力も技術もラグビーの選手としては高いものではありませんでした。合宿の最初の練習試合では大敗しました。合宿の最終日にはその大敗しているチームに大勝している東工大との試合することになっていたのですが、「負けるのがわかっているのだから試合はしたくない」と言う声も聞かれました。
しかし、試合になり、「全員が前に向かって走れば勝てる」と言う岡先生の理論を実践し、東工大に大勝しました。
これは相手の動きとは全く関係なく「チーム全員が前に向かって走る」と言う主体的な思考でチーム全員が徹底された結果です。
後日、当時監督だった千葉さんは「この合宿で選手たちは何かを掴んだみたいで、ラグビーの戦績もよく、人間として大きく成長したみたい」と感謝されました。
この時の話はブログを始めてから一度書いたのですが、この頃はまだ主体的思考に私自身が気づいていなかったので、岡先生のラグビー理論を実践したから勝てたと思っていました。しかし「人間として大きく成長したみたい」の部分は岡先生の理論では説明ができません。多分、選手たちは知らず知らずのうちに主体的思考を体験していたのではと思います。
東京外国語大ラグビー合宿の続きはこちらから。
この写真のブログの大井さんの記事も読んでいたただければ嬉しいです。
PDFのファイルが小さいので拡大すれば読めると思います。
下の方に私と千葉さんのことが書いてあります。
私とは40年以上の付き合いになりますが、私は仲間の集まりでは無口でほとんど話すことはないが、一度だけ星名先生の理論を話したことがあると書かれています。
星名理論と岡理論 93 主体的思考による環境の最適化 10
ラグビーにおける主体的思考とは 2
この様なタイトルを見ると、何か哲学的な話の様に見えますが、私には自分の意思をはっきりと持ち、それを実践するために全力を尽くすだけのことの様に思えます。
前回の東京外語大のラグビーの続きですが、私は彼らにラグビーの技術的なことは何も教えられませんでした。星名先生の理論、岡先生の理論に基づいたプレーを色々教えたかったのですが、ラグビーの基礎プレーも満足にできる体を作っていなかった当時の選手たちに、わずか5日間ほどでは何も教える時間がありませんでした。
教えたのは「ボールは全て前に蹴れ、全員前に向かって走れ、ボールを持っている相手に一番近い選手がとりあえず捕まえろ、後は皆んなで押し倒せ」ということだけでした。
これも「教えた」というよりは「こう言って怒った」という方が正確です。私は同志社をはじめ、いくつかのチームに教えに行きましたが、大声で怒る様なことはしたことはありません。
最初の試合では私には同レベルと思えるチームに大敗し、最終日にはその負けたチームに大勝している東工大の試合に「負けるのがわかっているので試合をしたくない」と言っている選手がいたので、初めて怒りました。
力の差は歴然としていました。しかし全力で戦ってくれさえすれば、それで良いと思っていました。しかし、試合前の雰囲気はいつもと違っていました。もう涙ぐんでいる選手もいて、「思い切り前に走ります」という選手や「勝ちます」と言う選手まで出てきて、この時点で私はもう満足していました。
ところが試合になると、本当に全員が前に向かって走り出しました。相手に強い選手がいて突破されかけるのですが、一人や二人タックルを外されても、次から次へタックルに来るので、その強い選手も前に出ることができませんでした。だんだん勢いの差が出てきて、試合は圧勝でした。
もうラグビーの理論も技術も何もありませんでした。ただ全員がボールを持っている選手のところへ全力で走り込んでいるだけでした。1人目は外される。2人目が少し触り、相手のスピードが緩み、走るコースが決まる。3人目が捕まえる。4人目がそれに加わる。5人目が加わって押し倒す。
この様な感じで、ポジションも関係なく、全員が前に向かってボールを持っている相手を捕まえに走っていくことに意識が徹底されている様でした。この様なディフェンスをされたら、私が相手チームでプレーしていても、突破することは難しいのではと感じたほどでした。
ラグビーは本質的には地域を取り合うゲームです。ルールでパスは後ろにしかできません。ボールを持っている選手より前の位置にいる選手はプレーに参加できません。敵味方、30人の選手が入り乱れて走り回ります。普通はポジションごとにマークする選手が決まっており、それぞれの役割が決まっています。しかし、そのポジションを全員が無視し、15人全員がボールを持っている選手に向かって走ってきたら、どの様に走ったら良いのか私でも想像できません。
これはラグビーの常識を無視し、「全員がボールに向かって全力で走る」と言うことだけに、意識が徹底し、主体的な思考に全員がなったことで初めて可能になったものだと思われます。
ラグビーの素晴らしさを逆に教えてもらった様な気がしました。
ラグビーをすることで自分の意思で環境の最適化を考えるきっかけを掴んでほしいと思っています。
東京外語大の合宿の様子です。
こちらからからご覧なれます。
星名理論と岡理論 94 主体的思考による環境の最適化 11
ラグビーにおける主体的思考とは 3
ラグビーはディフェンスの時の方が主体的思考を持ち易いと感じています。前回の東京外語大のラグビーの続きですが、教えたのは「ボールは全て前に蹴れ、全員前に向かって走れ、ボールを持っている相手に一番近い選手がとりあえず捕まえろ、後は皆んなで押し倒せ」ということだけでした。
ラグビーはボールを後ろにパスをしながら攻撃します。「ボールは全て前に蹴れ」と言うことはアタックをすることをやめて、全てディフェンスをする事と同じです。
岡先生が強力フォワードで日本一になった時もスクラムはマイボールでも自分のサイドにフッキングするのではなく、相手のフォワードの方へ蹴り込んで、相手側のアタックボールとしてディフェンスのタックルでフォワードを前に走らせる環境を作りました。
アタックの時は相手のタックルしに来る動きに合わせる受動的な思考で自分の動きを決めます。ところがディフェンスでタックルしにいく場合は、主体的にその動きを決めることができます。
東京外語大の選手は本当に全員が全力で、ボールを持っている相手に向かって、前に向かって走り出しました。これほど全員が自分の意思で、主体的思考で徹底された、プレーをする15人の選手の相乗効果は初めて見た様に感じました。 実力差は相当ありましたが、主体的思考で強敵に勝つことができましたl。
岡先生のいう通り「自分で考え、判断し、行動して、責任を持つ」と言う「主体的思考」でもって、15人の選手が前に向かって走ることができる最適の環境を作ることが重要です。
ラグビーとは関係ありませんが、主体的な思考の下に行動していただきたいとのお願いです。
コロナ禍に加え、ウクライナでの虐殺、核戦争さえ危惧される中で、「核シェアリング」や「基地に限定せず中核攻撃も含むべき」などと言い出す馬鹿もいる政権と忖度ばかりで重要な事実を報道しないマスコミで今の日本は酷いことになっている様です。
ネットで別の見方をする報道も見て主体的思考で持って判断して、それを発信してほしいと願っています。
今、一昨日、ご紹介した「一月万冊」で「巨悪を倒す小さないいね」キャンペーンを実施中とのことです。
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私の意見に賛同する必要はありませんが、まず、ご自身で情報を見直し、そして、行動し(SNSで発信し)、日本を間違った方向に進まないようにすることが重要だと思っています。
星名理論と岡理論 95 主体的思考による環境の最適化 12
ラグビーにおける主体的思考とは 4 前回の東京外語大の続きです。
東京外語大のラグビーから学んでほしいことがあります。主体的思考で徹底された、15人の選手のプレーが生み出す相乗効果です。
私は同志社大学卒業後、岡先生との約束通り、ほぼ20年近く、毎年同志社大学の夏合宿には臨時コーチとして参加していました。
また大学に在学中には同志社高校の夏合宿、さらには関西ラグビー協会の依頼により、富山国体の地元チームとして出場する全富山高校選抜チームの強化合宿にコーチとして2年連続で参加したり、卒業してからは友人の出身の高校、大学などの練習や合宿にも呼ばれて参加しました。
しかし、東京外語大のラグビーチームほど、1日で変身したチームは初めてです。その原因はほとんどの選手がラグビーを未経験で、勉強ばかりしていた選手がほとんどで、全員が素直に私の言う事を実践したからだと思います。
私はチームの決め事は決め事として尊重しますが、ラグビーは変化が常態で、その変化に対応するのは当たり前のことで、私自身が決め事をいつも破っていたので、全員が私の言った通りを本当に実行するとは思ってもいませんでした。
双方15人、合計30人の選手が入り乱れて走り回るラグビーは、それぞれのマークの選手がいるので、どうしてもマークの選手の動きに対応してしまうのは仕方がないことです。それぞれの選手が試合になると、自分の走るコースを教えられ、そのコースを走る事を意識します。通常はこれが一番正しい、効果的な走るコースです。
例えば、フォワードの選手は最前線で相手とボールの取り合いをして、奪い取った場合は味方のアタックとなり、ボールは後ろにパスをされて進むので、選手は後ろに向かって走り始めます。
逆にディフェンスの場合は相手のバックスが後ろにパスをしながら攻撃してくるので、前に向かってカバーディフェンスに走ることになります。
ところが、東京外語大学がしたように、全てのアタックでボールを後ろにパスをすることがなく、前に向かってキックをして、それを全員が追いかけることを忠実に実行したら、全員が前に向かって走ることになります。
通常、全員に前に向かって走れと言っても、ほとんどのチームの選手は自分の経験してきたコースから大きく変わることはありません。数人は経験してきたコースを外れて前に走る選手がいますが、結果的には大きく戦況を変えることができず、通常に戻してしまいます。
この日の東京外語大は試合開始から本当に全員が前に向かって走り出しました。東工大の強い選手に大きく突破されると、前に向かって走っていた選手は、大きく後ろに向かって戻らなければなりません。ところがこの日は最初からこの東工大の強い選手に向かって数人が走り込んで行ったので捕まってしまい、この選手は前に走ることができませんでした。
東工大の強い選手がボールを持った場合、東工大の前にいる選手はその選手がボールを持って前に走ってきてくれるので、後ろに向かってフォローに走ることはあまりありません。ところがこの日はこの強い選手の前にいた選手は全員後ろに向かって走らなければなりませんでした。
ほとんどの選手が前に向かって走っている東京外語大の正の連鎖と、ほとんどの選手が後ろに向かって走っている東工大の選手の負の連鎖と、双方全員の相乗効果の差は、信じられないほど大きなものでした。
東京外語大に大勝したチームに、大勝した東工大に、東京外語大は大勝しました。
東京外語大のラグビーに貢献された中村さん、伴野さん、千葉さんです。
星名理論と岡理論 96 主体的思考による環境の最適化 13
ラグビーにおける主体的思考とは 5 正の連鎖と相乗効果
前ページに赤字で書いた部分を説明します。
主体的思考で徹底された、15人の選手のプレーが生み出す相乗効果です。
ほとんどの選手が前に向かって走っている東京外語大の正の連鎖と、ほとんどの選手が後ろに向かって走っている東工大の選手の負の連鎖と、双方全員の相乗効果の差は、信じられないほど大きなものでした。
詳しくは星名理論と岡理論11 星名理論のディフェンスへの応用 に書いてあるのですが、当時デイフェンスラインは横一線に揃えて出るのが常識でしたが、私はあえて常識を無視し、直線的にまっすぐに想定できるタックルポイントへ全力で飛び出しました。これは私の主体的思考で自分の意思で出来るだけ前に走り込んだものです。
この結果私がタックルしたポイントは想定されるタックルラインよりはるかに前(相手のゴールラインに近く)でした。この私の無茶苦茶な飛び出しは相手にプレッシャーとなり、相手のアタックは通常より、前に出るのを抑える結果となりました。
その結果、私がタックルするポイントは青い丸印のあたりで、味方のフォワードは想定されたタックルラインよりさらに前に向かって走ることができます。相手のフォワードは全員(8人)、青い丸印のさらに後ろに帰り、それから私がタックルしたポイントに戻らなければなりません。味方のフォワード(8人)は、真っ直ぐに青い丸印のポイントのラックに勢いをつけて走り込むことができます。
東京外語大の選手は15人全員が私のような主体的な思考で前に向かって走るように意識が徹底されていました。
相乗効果(そうじょうこうか、シナジー、英: synergy)とは、ある要素が他の要素と合わさる事によって単体で得られる以上の結果を上げることです。15人の正の要素がそれぞれの要素と合わさることにより、相乗効果で単体で得られる以上の結果を上げることが起きているわけです。
相手の東工大のフォワードの選手8人は後ろに向かって大きく走ることになり、当然ラックに入る時間も遅くなります。このような負の要素が相乗効果により連鎖するようになります。
そしてラックでボールを取得した東京外語大はアタックでボールをまたキックして、全員で前に向かって走り、タックルに向かいます。前に書いたようなことが繰り返されて行われ、相乗効果はさらに大きなものとなっていきます。
このようなことが試合が始まって終わるまで続いたので、試合は東京外語大の圧勝となってしまいました。
星名理論と岡理論 97 主体的思考による環境の最適化 14
ラグビーにおける主体的思考とは 6 正の連鎖と相乗効果を起こす為に
東京外語大のラグビーが自分たちが大敗したチームに大勝している東工大に大勝したのは正の連鎖と相乗効果があったためでした。逆に考えれば、自分達より実力の優っているチームに勝つ為には、正の連鎖と相乗効果を起こすようなゲームをすれば良いということになります。
ラグビーは本質的には地域を取り合うスポーツで、制約が少なく自由で変化が常態です。双方15人、合計30人の選手が入り乱れて走り回るラグビーは、チャンスが一瞬にしてピンチに変わり、柔軟な対応が必須となります。
戦略的にはまず、自軍の選手15人が前(敵陣に向かって)に向かって走る場面をどのようにして作り出すかが重要になります。
例えば、フォワードの選手は最前線で相手とボールの取り合いをして、奪い取った場合は味方のアタックとなり、ボールは後ろにパスをされて進むので、選手は後ろに向かって走り始めます。逆にディフェンスの場合は相手のバックスが後ろにパスをしながら攻撃してくるので、前に向かってカバーディフェンスに走ることになります。
一番簡単な方法は1960年代にニュージーランドのオールブラックスが採用していたアップ・アンド・アンダーと呼ばれたスタンドオフがフォワードの前に高いキックを上げフォワードを前に走らせ、また次のボールも同じようにフォワードの前に高いキックを上げ、徹底的にフォワードを前に走らせる戦法でした。強い反面、10人ラグビーとも呼ばれ、ラグビーの面白さを無くすとの批判もあり、ルールなどがいろいろ改正されることになり、あまり使われなくなりました。
ルールなどが改正されましたが、15人全員が前に向かって走るラグビーが有利なことは変わりません。基本的にはディフェンスは出来るだけ全員が全力で飛び出し、タックルポイントをできるだけ前(相手ゴールラインに近く)に押し込むこと(岡理論)と、アタックではできるだけ浅いアタックラインでできるだけ前で、フォワードを後ろに走る事が少なくなるように意図したプレーをする事(星名理論)です。
ここまではもう今の日本のラグビーはほとんどのチームがやっている事です。その中で勝ち残っていくチームには正の連鎖と相乗効果を生み出す何かが存在しているものと考えられます。
私はこれが主体的思考ではないかと考えています。
ラグビーは変化が常態なので、その変化に対応するのは当たり前のことで、それぞれのマークの選手がいるので、どうしてもマークの選手の動きに対応してしまうのは仕方がないことです。
それぞれの選手が試合での自分の走るコースを教えられ、そのコースを走る事を意識します。通常はこれが一番正しい、効果的な走るコースです。
そのため、全員に前に向かって走れと言っても、ほとんどのチームの選手は自分の経験してきたコースから大きく変わることはありません。数人は経験してきたコースを外れて前に走る選手がいますが、それでは結果的には大きく戦況を変えることができず、通常に戻してしまいます。マークの選手の動きに対応してしまうのは仕方がないことです。
しかし、これは相手の動きに合わせる受動的思考で、自分で考えた前に向かって走る主体的な思考ではありません。
15人全員が、前に向かって走るには、どのようなコースを走れば良いのか、「自分で考え、判断して、行動し、責任を持つ」と言う主体的思考のもとにプレイをすれば、初めて定番的な過去の経験から判断したプレイから脱却できるものです。
こうすることで初めて全員が前に向かって走る、連鎖が生まれ、個々の選手の能力以上の相乗効果が生まれて、前に向かう力が個々の能力以上の効果を発揮するわけです。
星名理論と岡理論 98 主体的思考による環境の最適化 15
ラグビーにおける主体的思考とは 6 正の連鎖と相乗効果を起こす為に 2
自分のチームに正の連鎖と相乗効果を起こす一番手っ取り早い方法は全力で飛び出すデイフェンスでできるだけ前でタックルし、相手に負の連鎖を起こさせることです。そして今までの常識を全て捨て去り、ボールを持っている相手をできるだけ前で倒す主体的思考で、本能のような直感に従ってプレイすべきです。
多くのチームが、バックスのディフェンスは横一線で揃ってスタートするように教えられます。これでは一番遅くスタートする選手に揃えることになります。
重要なことは全員が前に向かって全力で走るということで、問題なのはスタンドオフやインサイドセンターがどうせタックルは届かないと思い、少し前に飛び出した後で、スピードを緩めるか横に向かってカバーディフェンスに走ることです。そうすると相手のスタンドオフやインサイドセンターが前にボールを持って走ってくるので、アウトサイドセンターはタックルに入りにくくなります。
通常は横一線に揃えて出る方が突破されにくいのですが、私はいつも全力で真っ直ぐに前の二人より早く、飛び出していました。多くのチームは私の飛び出しを見ると、少し前に出るのを控えたり、横へ走ったりで、受けるポイントが想定できるタックルラインより、後ろ(こちらから見ると前)でボールを受けようとします。
そうするとスタンドオフとインサイドセンターの二人は、できるだけ前でタックルした方がチームのためには良いことはわかっているので、私に合わせて、前に飛び出すようになってきます。
主体的思考のできる選手は、常識や決め事よりも、今の状況ではどうすることがチームのためになるのか考えながらプレーするので、私がタックルしやすいようにカバーに入ります。
そして私がタックルをしたら、スタンドオフかインサイドセンターのどちらか一人が私がタックルしたポイントにに入って来て、肩をつけると、もうこれはラックとなり、その場所より前にいる相手の選手は全員がオフサイドとなり、プレーに参加するにはラックのポイントより一度後ろに戻らなければ参加できません。
逆に味方のフォワードは全員オンサイドの位置にいるので、そのまま勢いをつけてラックに走り込むことができます。このようなプレイを試合開始から終了まで続けることです。
相手には悪循環(負の連鎖)による負の相乗効果が、味方には正の連鎖による正の相乗効果があり想像以上の力の差が出てきます。
このように書くと非常に簡単なように感じますが、主体的思考になるには特に日本人には結構難しいことです。小さい時から周囲との調和を教えられ、その枠から出ようとしない思考の元ではチームワークなどという綺麗な言葉で、戦況が変化しているのに、最初の決め事を守る意識が強いためです。
通常の指導者であれば、私が決め事を破り、一人大きく飛び出して相手に突破されたら、私を注意するのが普通です。岡先生からは一度もこのことで叱られたことはありませんでした。
当時、私たち3人の走力はほとんど同じでした。その中で私が飛び出すことができたのは、他の選手が揃って出ることに意識がいくあまり、80%のスピードをトップスピードと思い込んでいたのですが、私は本当に全力で飛び出していたからです。
ラグビーは地域を取り合うスポーツで、変化が常態です。一番先頭で前に向かって走っている選手を生かすべく、後の選手が主体的思考でそれに対応すべきです。常識的な決め事は無視して当然です。
星名理論と岡理論 99 主体的思考による環境の最適化 16
ラグビーにおける主体的思考とは 7 正の連鎖と相乗効果を起こす為に 3
ディフェンスで飛び出して、相手陣の深い所で倒したとしても、アタックで自軍の深いところで倒されると、これでは五分五分で正の連鎖と相乗効果を起こすことはできません。
ディフェンスだと主体的思考になりやすく、アタックでは相手の出方に合わせる受動的思考になりがちです。常識的には相手のディフェンスの出方を見て、アタックの仕方を決めるのが普通です。 相手が飛び出してくるディフェンスであれば、少し前に出るのを控えるし、相手がゆっくりと出てくるディフェンスであれば、少し前に出て勝負するというのが、普通です。
星名先生はタックルポイントをアタックする側が決めるという、それまでの発想とは真逆の、天動説の時代に地動説を説くようなコペルニクス的転回といった理論を私たちに教えてくれました。これによりアタックにおいても主体的思考が可能になりました。
私が「極端に浅いアタックライン」と名付けたスタンドオフの横一線にセンター二人が並びスタンドオフより早くインサイドセンターがスタートするものです。
通常、それぞれの選手がボールを持って対面の選手がタックルする場所(タックルポイント)を繋いだ線、タックルラインが想定できます。これはほとんどの場合、アタックラインとディフェンスラインの中間地点です。図では一番下の点線が想定されるタックルラインです。
インサイドセンターがボールを持っていない時にはこのタックルラインに入るとディフェンスの対面の選手はボールを持っていないのでタックルすると反則になるので、立ち止まるしかありません。
まずインサイドセンター(赤の選手)はボールがスクラムから出る少し前に一人だけ前に走り出します。敵はまだボールがスクラムの中にあるので前には走れません。
次にスクラムからボールが出ると同時にスタンドオフが真っ直ぐ、ボールを受けに走り込みます。
相手のインサイドセンターはそのまま前に走ると対面のインサイドセンターにぶつかり、ノーボールタックルの反則となるので、少し手前で立ち止まって待ちます。
スタンドオフはそのまま前に走りタックルされる寸前に横に長いパスを送ります。インサイドセンターは相手が立ち止まった瞬間に、横へ大きく走り、走りながらボールをもらいます。
立ち止まっている相手のインサイドセンターより加速をつけて走り込んでいる選手の方が早いので相手はタックルをすることができません。
もし相手がタックルをできたとしても、ほとんどゲインライン近くなので味方のフォワードは後ろに向かって大きく走る必要はありません。もし突破すれば、全員が前に向かって走ることができます。
ラグビーは攻守にわたり、主体的思考で前に向かって走る選手の数を多くすることによって、初めて、正の連鎖と相乗効果を起こすことが可能になります。
明日はこの概念図をアニメのように動かしてみたいと思っています。
星名理論と岡理論 100 主体的思考による環境の最適化 17
ラグビーにおける主体的思考とは 8 正の連鎖と相乗効果を起こす為に 4
ラグビーは本質的には地域を取り合うスポーツで、制約が少なく自由で変化が常態です。双方15人、合計30人の選手が入り乱れて走り回るラグビーは、チャンスが一瞬にしてピンチに変わり、柔軟な対応が必須となります。
戦略的にはまず、自軍の選手15人が前(敵陣に向かって)に向かって走る場面をどのようにして主体的に作り出すかが重要になります。
ディフェンスだと主体的思考になりやすく、アタックでは相手の出方に合わせる受動的思考になりがちです。 ディフェンスで飛び出して、相手陣の深い所で倒したとしても、アタックで自軍の深いところで倒されると、これでは五分五分で正の連鎖と相乗効果を起こすことはできません。
アタックでも浅いアタックラインで、主体的思考によりどのようにしてフォワードを前に走らせる場面を作り出していくのか、考えなければなりません。まず、深いアタックラインを考えた時点でもう受動的思考です。
極端に浅いアタックラインを採用すれば、相手にタックルされたとしても味方のフォワードは大きく後ろに走る必要はありません。
星名理論の概念図を動かしてみました。くわいい説明はこちらから
もし突破すれば、相手ファワードのカバーディフェンスは間に合わず、トライを取ることも簡単です。
ラグビーにおいても人生においても主体的な思考がどれほど重要なことか、もう一度考えて欲しいと思っています。
コロナ禍で星名先生と岡先生のラグビー理論を多くの人が読めるようにブログに残しておこうと思い書き始めました。 なんとか100回ぐらいは書きたいと思い、ちょうど今回で「星名理論と岡理論」の100回目となります。奇しくも、今日5月11日は岡先生の命日です。
コロナ禍で描き続けられるのか、また思いもかけない心臓手術などもありました、なんとか書き続けられたのは、私のブログを訪問し、いろいろ励ましてくださいました皆様のおかげだと感謝しております。
次回からは過去に書いたものを見直し、別の切り口でもう一度初めて書くような気持ちで、星名先生と岡先生のラグビー理論の凄さを書いていきたいと思っています。
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