2024-09-20

主体的思考で変貌した東京外国語大学

 制約が少なく自由で、変化が常態のラグビーには主体的思考が不可欠です。


 社会人の強豪チームでラグビーをしなかった私は、東京に出て丸紅でラグビーをやらしてもらいました。当時、丸紅には同志社高校からの同級生、伊藤武(同志社大学が初めて大学選手権で優勝した時の監督)がチームメイトとしてラグビーをしており、他にも京大の選手が多く、星名先生の「極端に浅いアタックライン」のラグビーを実践できたからです。

 岡先生から「同志社の合宿には必ず来い」と言われ、20年間ほど毎年8月の後半に夏休みをとり合宿に参加していました。一度だけ合宿に参加しなかった年があります。部員の死亡事故で岡先生が監督を辞任された時です。この時、私は丸紅でラグビーをしていた、東京外国語大学のラグビー部の監督の千葉さんから頼まれ、東京外語大の夏合宿に参加しました。
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 東京外国語大のラグビーの選手はほとんどが大学に入ってからラグビーを始めた人ばかりです。合宿での練習試合の初戦では私には同じ程度のレベルだと思うチームに大敗しました。合宿の最終日、東工大と試合が予定されており、その東工大は自分達が負けたチームに大勝しています。

 東工大との試合の前日、「負けるとわかっている試合はしたくない」との声も聞かれました。 私は「ラグビーは前に向かって走っている選手が多いほうが勝 つ、 ボールは全て前に蹴れ、FWもバックスも全員全力で前に 向かって走れ 、ボールを持っている相手に一番近い選手が とりあえず捕まえろ、後は皆で押し倒せ」と少し強い口調で怒りました。

 東工大との試合前には前日とは雰囲気が全く違い、「今日は勝ちます。前に向かって走ります」と言ってもう涙ぐんでいる選手もいました。私は勝つという気になってくれただけで満足していたのですが、試合になると、本当に全員が前に向かって走り、大勝してしまいました。

 岡先生は「ラグビーはFWが勝てないと勝負にならない。そのためにはFWを前に走らせなければならない。FWの前に走っている選手の数が多い方が強い」と言う考え方が基本にあり、私もその通りだと感じていました。私はこの岡先生の考えをそのまま伝えただけなのですが、東京外大の選手は全員が本当に前に走り、実践してくれました。

 東京外大が自分達よりはるかに実力のある東工大に大勝したのは3個の要因が考えられます。
 まず、第一は全員が主体的思考になり、全員が前に向かって走ったことです。通常ラグビーの練習ではポジション毎に走るコースなどを教えられ、そのコースを毎日走ることになります。通常、これが一番適切な走るコースなのですが、ラグビーは変化が常態ですので、最適なコースが異なる場合が沢山あります。

 しかし大抵の人は、もう環境が変化しているにも関わらず、自分が教えられたコースを走ります。ところが東京外大の選手は前に向かって走ると決めて全員が前に向かって走ると言う主体的な意志を持って走り出しました。

 次に起きたことが正の連鎖(スパイラル、好循環)です。
 フォワードが獲得したボールはスタンドオフで味方のフォワードの前にキックする。それをバックス全員が前に向かって走ることにより、誰か一人がフォワードの位置を超えた段階でフォワードの選手全員がオンサイドとなり、プレーに参加できることになり、前に向かって走り出します。
 
 誰かが相手のボールを持った選手を捕まえて、もう一人そこに参加すると、これはラックとなりもう相手のフォワードは全員がオフサイドとなり、そのラックの選手たちの後ろの位置まで戻ってからラックに入ることになります。スパイラル
  東京外大の選手は全員がオンサイドの位置にいるのでそのまま勢いをつけてラックに走り込みます。当然数が多いのでボールを獲得します。
 そしてそのボールをキックして同じことを繰り返します。

 そしてその次に起きたことが相乗効果(シナジー)です。
 全員が前に向かって走ることにより、個人の体力の消耗も少なく、勢いもついて、スピードもアップされます。このような効果が15人の選手全員に起きているわけです。
  
 逆に相手の東工大は全て真逆のことが起きているわけです。全員が後ろに向かって走り、相手より長い距離を走り、体力を消耗し、負の連鎖(悪循環)が起きており、マイナスの相乗効果が15人全員に起きているわけです。



 

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