2022-04-26

星名理論と岡理論 95 主体的思考による環境の最適化 12

ラグビーにおける主体的思考とは 4 

 東京外語大のラグビーから学んでほしいことがあります。主体的思考で徹底された、15人の選手のプレーが生み出す相乗効果です。

 私は同志社大学卒業後、岡先生との約束通り、ほぼ20年近く、毎年同志社大学の夏合宿には臨時コーチとして参加していました。

 また大学に在学中には同志社高校の夏合宿、さらには関西ラグビー協会の依頼により、富山国体の地元チームとして出場する全富山高校選抜チームの強化合宿にコーチとして2年連続で参加したり、卒業してからは友人の出身の高校、大学などの練習や合宿にも呼ばれて参加しました。

 しかし、東京外語大のラグビーチームほど、1日で変身したチームは初めてです。その原因はほとんどの選手がラグビーを未経験で、勉強ばかりしていた選手がほとんどで、全員が素直に私の言う事を実践したからだと思います。

 私はチームの決め事は決め事として尊重しますが、ラグビーは変化が常態で、その変化に対応するのは当たり前のことで、私自身が決め事をいつも破っていたので、全員が私の言った通りを本当に実行するとは思ってもいませんでした。

 双方15人の選手が入り乱れて走り回るラグビーは、それぞれのマークの選手がいるので、どうしてもマークの選手の動きに対応してしまうのは仕方がないことです。それぞれの選手が試合になると、自分の走るコースを教えられ、そのコースを走る事を意識します。通常はこれが一番正しい、効果的な走るコースです。

 例えば、フォワードの選手は最前線で相手とボールの取り合いをして、奪い取った場合は味方のアタックとなり、ボールは後ろにパスをされて進むので、選手は後ろに向かって走り始めます。

 逆にディフェンスの場合は相手のバックスが後ろにパスをしながら攻撃してくるので、前に向かってカバーディフェンスに走ることになります。

 ところが、東京外語大学がしたように、全てのアタックでボールを後ろにパスをすることがなく、前に向かってキックをして、それを全員が追いかけることを忠実に実行したら、全員が前に向かって走ることになります。

 通常、全員に前に向かって走れと言っても、ほとんどのチームの選手は自分の経験してきたコースから大きく変わることはありません。数人は経験してきたコースを外れて前に走る選手がいますが、結果的には大きく戦況を変えることができず、通常に戻してしまいます。

 この日の東京外語大は試合開始から本当に全員が前に向かって走り出しました。東工大の強い選手に大きく突破されると、前に向かって走っていた選手は、大きく後ろに向かって戻らなければなりません。ところがこの日は最初からこの東工大の強い選手に向かって数人が走り込んで行ったので捕まってしまい、この選手は前に走ることができませんでした。

 東工大の強い選手がボールを持った場合、東工大の前にいる選手はその選手がボールを持って前に走ってきてくれるので、後ろに向かってフォローに走ることはあまりありません。ところがこの日はこの強い選手の前にいた選手は全員後ろに向かって走らなければなりませんでした。

 ほとんどの選手が前に向かって走っている東京外語大の正の連鎖と、ほとんどの選手が後ろに向かって走っている東工大の選手の負の連鎖と、双方全員の相乗効果の差は、信じられないほど大きなものでした。

 東京外語大に大勝したチームに、大勝した東工大に、東京外語大は大勝しました。

葉さんたちの写真
東京外語大のラグビーに貢献された中村さん、伴野さん、千葉さんです。

0 件のコメント:

コメントを投稿