ラグビーにおける主体的思考とは 6 正の連鎖と相乗効果を起こす為に
東京外語大のラグビーが自分たちが大敗したチームに大勝している東工大に大勝したのは正の連鎖と相乗効果があったためでした。逆に考えれば、自分達より実力の優っているチームに勝つ為には、正の連鎖と相乗効果を起こすようなゲームをすれば良いということになります。
ラグビーは本質的には地域を取り合うスポーツで、制約が少なく自由で変化が常態です。双方15人、合計30人の選手が入り乱れて走り回るラグビーは、チャンスが一瞬にしてピンチに変わり、柔軟な対応が必須となります。
戦略的にはまず、自軍の選手15人が前(敵陣に向かって)に向かって走る場面をどのようにして作り出すかが重要になります。
例えば、フォワードの選手は最前線で相手とボールの取り合いをして、奪い取った場合は味方のアタックとなり、ボールは後ろにパスをされて進むので、選手は後ろに向かって走り始めます。逆にディフェンスの場合は相手のバックスが後ろにパスをしながら攻撃してくるので、前に向かってカバーディフェンスに走ることになります。
一番簡単な方法は1960年代にニュージーランドのオールブラックスが採用していたアップ・アンド・アンダーと呼ばれたスタンドオフがフォワードの前に高いキックを上げフォワードを前に走らせ、また次のボールも同じようにフォワードの前に高いキックを上げ、徹底的にフォワードを前に走らせる戦法でした。強い反面、10人ラグビーとも呼ばれ、ラグビーの面白さを無くすとの批判もあり、ルールなどがいろいろ改正されることになり、あまり使われなくなりました。
ルールなどが改正されましたが、15人全員が前に向かって走るラグビーが有利なことは変わりません。基本的にはディフェンスは出来るだけ全員が全力で飛び出し、タックルポイントをできるだけ前(相手ゴールラインに近く)に押し込むこと(岡理論)と、アタックではできるだけ浅いアタックラインでできるだけ前で、フォワードを後ろに走る事が少なくなるように意図したプレーをする事(星名理論)です。
ここまではもう今の日本のラグビーはほとんどのチームがやっている事です。その中で勝ち残っていくチームには正の連鎖と相乗効果を生み出す何かが存在しているものと考えられます。
私はこれが主体的思考ではないかと考えています。
ラグビーは変化が常態なので、その変化に対応するのは当たり前のことで、それぞれのマークの選手がいるので、どうしてもマークの選手の動きに対応してしまうのは仕方がないことです。
それぞれの選手が試合での自分の走るコースを教えられ、そのコースを走る事を意識します。通常はこれが一番正しい、効果的な走るコースです。
そのため、全員に前に向かって走れと言っても、ほとんどのチームの選手は自分の経験してきたコースから大きく変わることはありません。数人は経験してきたコースを外れて前に走る選手がいますが、それでは結果的には大きく戦況を変えることができず、通常に戻してしまいます。マークの選手の動きに対応してしまうのは仕方がないことです。
しかし、これは相手の動きに合わせる受動的思考で、自分で考えた前に向かって走る主体的な思考ではありません。
15人全員が、前に向かって走るには、どのようなコースを走れば良いのか、「自分で考え、判断して、行動し、責任を持つ」と言う主体的思考のもとにプレイをすれば、初めて定番的な過去の経験から判断したプレイから脱却できるものです。
こうすることで初めて全員が前に向かって走る、連鎖が生まれ、個々の選手の能力以上の相乗効果が生まれて、前に向かう力が個々の能力以上の効果を発揮するわけです。
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